彼について考えようの会・第一回
結局のところ最後まで来歴が明かされず、どういう人生を送ってきたのか、その性格・人格形成に関わる事項を何一つ明かされなかったギーヴとかいう謎の主要キャラクター。
明かされないんだから好きに創造(想像)してしまえ! という気持ちで始まった、彼について考えようの会・第一回。お題は「なぜあの時あの場所にいたのか」
司会進行はわたくし沖波が務めます。よろしくおねがいします。
さて、議題は「なぜギーヴはルシタニア軍に取り囲まれた王都の城壁にいたのか」。
前提として、私の考え方に「わざわざ行動に移したということは、それだけの関心があるということ」がある。
つまり、何かを見聞きして情報を得、それについて何事かを考えたとしても、わざわざ実現するために行動に移すのは、その人なりに関心がある、コストを支払ってでも得たい利益があるからである、という考え。
だからギーヴの場合であれば、「あの場でシャプールの願いを聞き届けたこと=シャプールの請願がなにかしらギーヴの心を動かした」と考えることができるのではないか。
▷利益を取った
・弓の腕を披露する
・兵に為せない万騎長の請願を叶える=報酬 (という発想は普通思いつくものか?)
▷関心があった
・請願の内容がお気に召した
・以前からシャプールを知ってる(噂だけ/既知/友人)
などの何かしらの理由があったと考えておくことにしておく。
その上で、なぜピンポイントにあのタイミングであの城壁に? ということを考えたい。
メタいことを言うと、そういう都合、デウス・エクス・マキナ、で終わるんだけど。そもそも前歴がなく自由に行動できるギーヴはそのキャラの在り方からしてそういう動かし方を前提としたキャラなんだけど。
キャラではなく人格を持った人間として考えてみようという試みなので。
ギーヴほどの情報に対する嗅覚(があると思い込んでいるがそれすらも妄想である)があれば、アトロパテネで国王軍が敗北を喫したという情報を得、その後王都が混乱するだろうことは想像に容易いことだったのではないか。であれば沈む船に乗り続ける理由は無い。普通ならさっさと王都を脱するだろう。にもかかわらずそうしなかったのは、危険と天秤にかけても傾く何かがあったと考えることができる。
それとも、まさか王都陥落まで行くと思わなかったのかな。わかんない。たんに火事場泥棒でも狙っていたのか? それもあるかもしれない。自分一人ならどうとでもなる程度の力量はある。
シャプールの身が敵陣にあることは、一部兵士たちであれば知っているかもしれないが、その情報は一般人には届いていないだろう。
だが、ギーヴはそれより前に、王宮の女に手を出している。女が王宮勤めであることを知っていたかは不明だが、知っていた場合になんらかの情報を掴んでいる可能性は十分にあり得る。それが軍の動きに関するものである可能性もまた、無くは無い程度にはあるだろうか。いや、寝台の上でする話としてはかなり情趣に欠ける話ではあるな。しかしまあ、王宮から火事場泥棒よろしく金目の物を持ち出して王都を脱出する機会を窺っていたとしたら、軍の動きは欲しいところ。
そんでもって、閨から拾い上げた情報の中に「シャプール捕縛」があったかどうか…まぁおそらく無いとは思う。思うけど、イレブンナインであっても100ではないうちは妄想を許してほしい。
実は既知の間柄だったシャプさんとギヴ殿。ギヴはたらしこんだ女からシャプールが捕縛されていることを聞き、王都脱出を後回しにして城壁に向かう――
これはまたもや自論なんですが、乱世で生きるためには、(生き残るのに)正しい判断をする必要があるのは勿論だが、その判断を素早く下して即座に行動することもまた必要であると思っている。戦において状況は刻一刻と変化するのだから、同じ判断を下すのだとしたらそれはなるべく早い方がいい。判断が遅れ行動が遅れると後手後手に回らざるをえなくなり、打てる手はどんどん減っていく。フィクションの世界においては判断を先延ばしすることこそ最悪の下策であることが多いように感じている。受け手に回って勝てるのはよほど事前に周到な準備がしてある場合か、相当な戦力差がある場合であろう。
なんの話だったかな……
……何が言いたいかというと、生き残る人というのはよほど幸運か、あるいは即断即決か、のどちらかなんじゃないかという話。もしかしたらその両方であるのかもしれないけど。
ギーヴは速断即決ができる人間だと私は考えている。
そういう人はえてして、そうでない人間からは「よくわからない」「ころころと変わる」と思われがちだ(と思う)。どちらが良いかを比べて自分にとって良い方を常に選び続ける前者は、判断が遅いあるいは判断することすらしない人にとっては「前に言っていたのと違う」と言いたくなる行動を取る可能性がある。
つまり「もう状況が違うんだよ」「あの時はそれが最善だったがそれはあの時の話。今ではない」「それはそれ、これはこれ」というすれ違いが幾度となく起きるだろう。
それが積み重なって、周囲の人からは「軸がどこにあるのかわからない」「よくわからない人」というラベルが貼られる。
そのラベルは時に免罪符としても作用するのかもしれない。「あいつのことは考えてもわからないから放っておくしかない」。それはそれは随分と動きやすくなることだろう。
え、ちょっと待ってください。今これはどこに向かってるんですかね。議題から逸れていませんか?
そうですね。ちょっと収拾がつかなくなってしまったので、中途半端ですが、そして唐突ですがここで会を閉めたいと思います。
今回のまとめとして、「結局のところ何もわからない」が、「沖波はギーヴのことを取捨選択に優れ判断の早い男だと思いたがっている」ということがわかりました。また、シャプールとギーヴが実は顔見知りであり、そのためにあの場にいた可能性が示唆されました。しかしこれには論拠が全くないため、完全なる妄想であることを補足しておきます。
それでは皆さまお疲れ様でした。
次回の開催時期は未定です。
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