王宮怪談あるいは犬馬の労 - 1/3

どのような流れでそうなったのか、今となってはしかと思い出せない。とにかく忙しかったのだ。なにせ王都奪還を成し遂げたばかりである。城下をはじめとした各地の復興、王宮の修復、国交の再開、傷ついた者たちへの手当……すべきことは多々あれど、かつての御世、先王の下に集った人材は戦乱によって各地に散り、あるいは既にこの世になく、つまりはひどい人手不足だったのだ。
そんなわけで、アルスラーン翼下の諸将は連日ほぼ王宮に泊まり込みで執務を行っていた。
たしか、きっかけはこの一言だった。
『そういえば最近、出るらしいぞ』

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