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そうして負けた男は失った。かつて憧憬を集めたであろう見事な肢体を、男としての尊厳を、生殺与奪の権を、自我を。敗北者は蹂躙されるという戦場の掟通りに。

王都から北上すること数ファルサング。そこには手頃な広さの林があって、イスファーンは時間と身体が空くと狼たちを連れてよくそこへ向かう。青い若草の匂いを運ぶ早春の風は清爽で、イスファーンは馬上で大きく深呼吸した。道傍にはラーレの花が群れ咲いて目…

それが装うことでさらに偉容を誇るというのなら、案外悪い話ではないのかもしれない。