とつぜんですが、皆さん、命乞いは好きですか?
私は記憶にある限りされたこともないし、したこともないんですけど、コンテンツの中では一回ぐらい遭遇しますよね、命乞い。ジャンルによりけりだとは思うけど。
急に冒頭の質問を投げかけられて困惑したと思うんですけど、私は今日、本当に今日この日に、もしかして、自分って命乞い見るの好きなのかもしれない……と思ったのでこの雑記を書いてます。
思えばその兆候は以前からあったのです。
みんなご存知オモコロ。大人が真剣に馬鹿やってるところ見ると救われる気持ちがしますよね。とはいえ私はそこまで熱心なファンではなく、Twitterで流れてきた面白そうな記事を流し読みする程度です。最近だとみくのしんさんが「走れメロス」を読むやつが話題になりましたね。あれは私も泣いた。だけど、やっぱりそれまでで、熱心にアクセスするとか、ライターのアカウントをフォローするとかは全然していないわけです。一回性のアクセス。
そんな私が、唯一、繰り返しアクセスしている記事があります。話の流れからしてもうお気づきかとおもいますが、そう、「命乞い選手権」です。
これだけは、何度も読みに行ってます。
特にトップバッターの永田さんの吹っ切れた命乞いっぷりとかすごい好きです。
それからあるいは張譲。
最近Wolongを非常にゆっくりとしたペースでプレイしているんですが、そこに登場する張譲というキャラの命乞いも好きです。下手くそで。
張譲はそのステージのボスなのですが、プレイヤーがとどめを刺すわけじゃないんですよ。戦闘としては主人公が勝つんだけど、命からがら張譲は逃げ出す。走り込んだ部屋には山と積まれた丹薬がある。これさえあれば、と張譲が思ったところで董卓が現れる。
無言でのしのしと近づく董卓に、張譲は命乞いをするわけです。金か、宝か、それとも女か、と。腐っても十常侍(朝廷のめちゃくちゃ権力持ってる高官みたいなもの。余談だけど「十」なのに12人いるし、ジャイアントロボに登場する「命の鐘の十常寺」は一人で十常寺を名乗ってる)の一人なのでまあそれくらいは用意できよう。しかも相手は酒池肉林の代名詞・董卓。効果てきめんか?
……しかし董卓はなおも無言のまま詰め寄る。張譲はついに「丹薬か」と口にする。立ち止まった董卓に「なら半分、半分やる」というわけです。
さて、董卓はどうするか?
寸時の迷いも躊躇いもなく剣を一閃させるわけです。絶命して倒れ臥す張譲。死体を跨いで丹薬に近づく董卓。
少し考えてみれば当たり前の結果です。主人公との戦闘により今にも死にそうな張譲の命乞いを聞いて丹薬を半分もらうか、一振りすれば簡単に絶命させられて、しかもその後ろの丹薬もまるごと手に入る方を選ぶか。命乞いされた方に少しでも良心があれば前者に賭けてもいいけど、相手は董卓ですからね。
董卓の暴虐ぶりはあいかわらずで、逆らった捕虜は舌を抜かれ、目をえぐられ、熱湯の煮えた大鍋で苦しみながら殺された。捕虜の泣き叫ぶ声は天にこだましたが、董卓はそれをみて笑い、なお平然と酒を飲んでいたという。
こんな人間ですよ。一人殺す程度、少しも心が痛まない。そりゃ剣を振る方を選ぶでしょうよ。
これらの例からわかるとおり、命乞いってめちゃくちゃむずかしい。
相手が何を望んでいるのかを見極め、相手が自分を殺すことと殺さないことを天秤にかけたとき、圧倒的に殺さない方に利があると思わせないといけない。命がけのプレゼン。たぶん、相当の機転と胆力が必要。自分の価値はなんなのか、という強みを持つことが大事だね(就活?)
する機会なんぞ来ないほうが良いに決まっているが、もし機会があったときのために、すこし考えておくべきかもしれない。
自分の価値、という話で思い出したんだけど、歴史で「自分の重みわかってていいな~!!!」て思うのは田辺城の戦いだね。細川藤孝が籠城したやつ。
宮様(代理大石)「あんたが死んだら古今伝授が!!!!! ちょっと戦いっかいやめません?」
藤孝「い~~えやります。やらせてください! 文武両道!! 討ち死にはもとより覚悟のうえ。こちらお渡ししておきますね~」
つ 古今伝授の箱、古今集証明状、源氏抄、二十一代和歌集
なんちゅうえげつねえレア泥
宮様(代理前田)「八割方教え終わったっていうけどさ~、やっぱりメモ読んで免許皆伝はさ~……お弟子さんみんな直接教えてもらいたいと思ってるよ?」
藤孝「い~~えやります。やらせてください!」
宮様「え~~~~いこうなりゃ三度目の正直三顧の礼、大納言、中納言、烏丸中将、三人でお行きなさい!」
藤孝「三度も勅命に従わぬは流石に不敬。殿下の命とあらば」
宮様「ハイ講話すぐ講話みんな聞いたよね講話だよ!!!!!」
これ、藤孝サンこういう流れになるのわかっててやってたんじゃないかと私は疑ってるわけですが、そこらへんの通説を知らないのでなんとも言えない。吉川永青の書いた『裏関ヶ原』(たぶん)に収録されてる「細き川とて流れ途絶えず」がもろにここの細川二代の話だった記憶。
自由に話しをしていたら命乞いからずいぶんと話がずれましたが、結局のところ、自分の価値を知っていることは強みだし、知っているだけでなくいざというときにそれがどれほどの重みなのかをお売れ全できる胆力のある人、いいねって話だったのかも? 違うかも。 プレゼンなんて上等なものじゃなくて、使えるもの全部使って、足蹴にされてもみじめに縋って這いつくばって、人以下の扱いを受けようとも生き延びる、という強い意志で泥水を啜る人も、嫌いじゃないよ。好きなキャラがそうして雌伏してるのは結構見たいタイプの人間です。
とはいえ映画「ホビット」に登場するアルフリド(戦場を逃げ回り、女装してまで逃げようとしてつでに火事場泥棒して得た貨幣を胸に詰めこみ逃亡するが、最終的に投石機から投げだされてトロルの喉に詰まって死ぬ)みたいな生き汚さはちょっと違うかな………なにか投げ出せない目的のために生きたい、生きねばならない、と思っている方が好き。「死ねない」と言い換えてもいい。「死にたくない」ではなく「死ねない」。そういうのが好きなところが「敵対イス」には詰め込まれている気がする。私の脳内では。
終わりどころを見失いましたのでこれにて締めにします。
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